20代のデザイナーに必要な3つの能力
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「デザイン力をアップするにはどうしたら良いの?」
こんにちは、ディレクターの須藤です。
先日、駆け出しのデザイナーからこんな質問をされました。あるよね、そういうの。きっと何か壁にぶつかったに違いない。神が舞い降りた最高のデザインは、社内プレゼンによってその翼をへし折られたのかもしれない。彼は今、藁をも掴みたい状況に違いない。
そこで今回、僕のやや15年にわたるデザイナーとしての経験(のみ)から、デザイン力をアップするためにはどんな能力が必要なのか、真剣に考えてみました。これを読んだ20代のデザイナーや、デザイナーを目指す学生、何より翼を失った彼にとって何かの助けになれば良いなと思います。
主にグラフィック・WEBデザイナー向けのエントリーです。
デザイナーになるための資格はない!
「僕はデザイナーです。」
宣言したその瞬間から誰でもなれるのがデザイナーです。資格も必要なければ免許もいらない、何て素晴らしい職業。ところが、裏を返せば資格や免許によって最低限の品質が担保されないのがデザイナーとも言えます。
つまり、デザイナーとしての品質を保証するのはデザイン成果物であり、それによって得られる効果です。デザイン力をアップするということは、これらの行う能力を身に付けるということです。
デザイナーに必要な3つの能力
ぱっと思いつく限りのものをピックアップしてカテゴリー分けしたのがこちらの図。「もっと早く知っておけば良かった!」と思うものは課題解決能力とマネジメント能力、「これは意識してやってきた!」と思えるのは基礎能力。
課題解決能力
そもそもデザインって何?って話しを整理しましょう。
デザインは課題解決行為。デザイナーは課題解決する人です。ポスターを作ったり、WEBサイトを作ったりするのは課題解決行為の手段の1つ。
つまり、デザイン力をアップさせるには、そのプロセスに必要な能力を早いうちに獲得するのが吉。これを身に付けると、課題解決に関わる人達と意思疎通が容易になり、業務効率と精度を上げることができます。
課題解決プロセスには幾つもの切り口があるけど「観察する」「まとめる・仮説を立てる」「発想する」「表現する」という流れが一般的。プロセスの前半はリサーチャーやプランナーが受け持ち、後半以降がグラフィック・WEBデザイナーが受け持つのが良く見る流れ。
デザイナーの自己研鑽で多く行われるのは、図の黄色い囲いのところ、表現する手段にフォーカスして学ぶこと。みなさんも綺麗な、シンプルな、かっこいいデザインとするにはどうすれば良いのか、書籍で学んだりWEBサイトで情報収集したりするはず。
ところが、上に書いたように表現することはあくまでも課題解決プロセスの1つで、他に3つもある。デザイン力とはこれらの総合値なので、4つのプロセスで力を発揮できることが理想的。後述するけど、デザイナーは経験を重ねていくと課題解決プロセスの上流側への参加が増えていくため、表現するだけでは役割が不足気味となる。課題解決能力で必要なことは表現することと同様に、リサーチャーやプランナー、場合によっては営業マンなどが行っている他の課題解決プロセスも学ぶことです。
学び方はとても簡単。
社内の担当者に話を聞く。
社内にいるリサーチャーやプランナー、営業マンを捕まえて、業務を進める上で気を付けているポイントを聞けば良いです。リサーチャーからは観察に必要なスキルを、プランナーからは企画する上で活用しているフレームワークを聞けるはず。
デザインの依頼が手元に届いた際には、その意図を聞くことも大切。何故このデザインとなるのか、どんな観察から課題感をまとめ、仮説を立てて解決アプローチを生み出したかを知ることは、表現する上で良い意味での制約を受けることに繋がります。漠然と「良いデザインにしておいて!」じゃ困りますよね。
「ターゲットは50代女性。まだまだ若くありたいという想いが強いので、コンセプトは“5歳若く見られるスキンケア”、明るく前向きになれるようなビジュアル表現でお願いします!」
みたいな意図を予め押さえていた方がデザインしやすいです。
マネジメント能力
もっと若いうちに知っておきたかったマネジメント能力。
課題解決行為をスムーズに行うために必要な能力です。スケジュール管理を学ぶことで、自身のタスクと時間を正しく管理できるようになります。先輩や上司が仕事をふる上で計算できるデザイナーと捉えるようになるので、結果的に仕事の機会を多く与えられることに繋がる。
プロジェクト管理は、実際に管理するわけではなくても、その方法論を知ることで管理者を助け、業務を円滑にまわすために必要な能力です。
これらの能力はマネージャー(管理者)の必須スキルですが、マネジメントの心得を持つメンバーは大変重宝されます。社内外のプロジェクトで必要とされるデザイナーになるには修得して損はない能力です。
基礎能力
最後に、デザイナーというより社会人としてとても大事な能力をピックアップ。
なかでもコミュニケーション能力は非常に重要。デザイナーは、デザインの経緯を説明しなければならないシーンが非常に多く訪れます。クライアント先でのプレゼン、社内メンバーとの打合せ、デザイナー同士でのブレストなどなど。デザインを言葉で説明する力、それを相手に伝える力はデザイナーにとって重要な能力。
最適化能力は、日々の業務を通じて、どうしたらもっと良いデザインを仕上げられるかとか、 どうしたらもっと楽に早くデザインできるかを考える力です。
学習能力も、長いスパンで見たときには重要な能力です。常に新しい動向や技術にアンテナをはり、それを修得して実際に活用する行動は止めてはいけません。活躍している人はすべからく努力されていることを忘れずに。 日々の精進大事です。
基礎能力は仕事がどうこうより、社内メンバーやクライアントと楽しく仕事をする上では必須の能力だと思います。大事。
デザイン力アップはキャリアアップすること
入社1、2年目の20代デザイナーや、デザイナー志望の学生は、グラフィック・WEBデザイナーの基礎ともいうべき表現する部分を養えば大丈夫。欲を言えば、スケジュール管理は学んで欲しいところですが。とはいえ、基礎を磨き続けるだけでは5年ほどで成長スピードの鈍化を感じるようになるはずです。
これは、経験値の浅い駆け出しの頃に10点だった表現スキルが、年を追うごとに20点、35点、60点…と積み重なり、良くも悪くも平均70点をマークできるようになってしまうから。もはや表現スキルのみでは高得点をマークすることが難しくなり、デザイナーとしてのキャリアに不安を抱えることになります。
デザイナーのキャリアを見据え、新しいことにチャレンジする
デザインの現場の多くでは、デザイナーがディレクションを行う立場になったり、クライアントと一緒に課題解決のために知恵を絞る立場になったりします。つまり、デザイナーが本来の業務領域以外の経験を少しずつ重ねていくことで、自信の立ち位置をより重要なポストへと変化させている。これがデザイナーのキャリアを形成する1つの型。
そう考えると、いつまでも表現の幅だけ追究する訳にはいかない事情を伺い知ることができます。表現することはデザインプロセスの1要素であり、他にも気にしなければならない要素があるということの裏付けです。
それだけしか知らない人とそれ以外にも精通している人、どちらと仕事をするのが楽ですか?と考えてみると良いです。
キャリアを描くには、冒頭の図の表現するを基準に、左下方向へ能力を磨いていくことが近道です。
凄腕デザイナーは課題解決能力が高い
このあたりの話をすると、「有名デザイナーはパッケージとかずっと作り続けてるじゃん!」と言われます。確かにその通り。ところが世の凄腕デザイナーの多くは、自分の手は動かさずに部下や後輩デザイナーにその作業を任せます。代わりに彼らはデザインの課題は何かを観察し、その解決策や方向性を考えることに集中している。つまり、課題解決プロセスの上流部分に多くの時間を使っているわけです。
裏を返すと、解決するべき課題とそのデザインアプローチさえ正しく定まれば、少しのディティール情報を追加するだけで他のデザイナーにバトンタッチできてしまう。彼らは表現するだけじゃなく課題解決能力が押し並べて高いわけですね。
また、課題解決を円滑に行うためには、マネジメント能力や基礎能力といった土台がしっかりしている必要もあります。
デザイン力をアップするために3つの能力をオススメする理由がコレです。
まとめ
経験上、デザイナーは20代のうちに広く浅く、たくさんのことを学んでいく方が後々のキャリアに良い影響を与えると感じます。
グラフィック・WEBデザイナーの範疇は当然のこと、それ以外の部分にも手を拡げていくことは、課題解決プロセス上の共通言語を多く理解し、課題解決をスムーズに行うために必要です。
もしあなたが表現することに多くの時間を割いているデザイナーさんであれば、紹介した方法によるデザイン力アップをオススメします。